親から家の資金援助を受けるときの、贈与税の非課税制度|限度額・要件・申告の流れ

家を建てる資金の一部を、親や祖父母が援助してくれることになった。ありがたい一方で、「まとまったお金をもらうと贈与税がかかるのでは」「何か手続きが要るのだろうか」と、急に気になり始める方は少なくありません。

お金の話は家族の間でも切り出しにくく、制度の名前も長くて、つい後回しにしてしまいがちです。ただ、この制度には期限と申告の手続きがあり、時期を知らないまま進めると、使えるはずの非課税が受けられないこともあります。

この記事では、国税庁が公表している「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」について、限度額・期限・要件・申告の流れを整理します。内容は2026年9月時点で公表されている情報をもとにしています。税制は改正されることがあるため、最新の情報は国税庁のホームページや税務署で確認してください。

  • 父母や祖父母から住宅取得等資金の贈与を受け、要件を満たせば、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外の住宅は500万円まで贈与税が非課税になります。
  • 翌年3月15日までに新築等をし、原則として同日までに入居(遅くとも翌年12月31日まで)する必要があります。
  • 非課税になる場合でも、翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告と添付書類の提出が必要です。
目次

親からの住宅資金の援助が非課税になる制度とは

国税庁のタックスアンサー(No.4508)によると、父母や祖父母などの直系尊属から、住宅の新築・取得・増改築等の対価に充てるための金銭の贈与を受け、一定の要件を満たす場合、非課税限度額までの金額について贈与税が非課税になります。

ここでいう「直系尊属」は、父母や祖父母のことです。同じページでは、配偶者の父母(または祖父母)は直系尊属に該当しないとされています(養子縁組をしている場合は該当します)。また、対象は「住宅を取得するためのお金」の贈与です。住宅の新築に先行して、あるいは新築とともに取得する敷地(土地)の購入も含まれるとされています。

非課税限度額と適用期限

国税庁のタックスアンサー(No.4508、令和8年4月1日現在法令等)で確認できる限度額と期限は次のとおりです。

項目内容
対象となる贈与の期間令和8年(2026年)12月31日までの贈与が対象(2026年9月時点。延長の有無は国税庁の最新情報で確認)
省エネ等住宅の場合1,000万円まで非課税
上記以外の住宅の場合500万円まで非課税
申告の期間贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで

「省エネ等住宅」とは、省エネルギー性能・耐震性能・バリアフリー性能のいずれかの基準に適合する住宅です。新築住宅の場合、同ページでは次のいずれかとされています。

  • 断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上
  • 耐震等級2以上、または免震建築物
  • 高齢者等配慮対策等級3以上

なお、令和5年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または令和6年6月30日までに建築された住宅については、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上でも省エネ等住宅に該当するという経過措置があります。

期限の年をまたぐ計画では

2026年9月時点の国税庁のページでは、対象は令和8年(2026年)12月31日までの贈与とされています。2027年以降の扱いは、年末ごろに公表される税制改正の内容を、国税庁・財務省の最新情報で確認してください。

この制度は、贈与を受ける年や入居の期限が年単位で決まっています。家づくりが期限の年をまたぐ計画であれば、贈与を受ける前に延長の有無を確かめておくことが大切です。「年内に贈与を受けるか、年明けにするか」で使える制度が変わる可能性がある、という点は覚えておきたいところです。

受け取る人(受贈者)の主な要件

非課税の適用を受けるには、贈与を受ける人(受贈者)が一定の要件を満たす必要があります。国税庁のタックスアンサー(No.4508)に挙げられている主なものは次のとおりです。

  • 贈与者の直系卑属(子や孫)であること
  • 贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること(新築等をする住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は1,000万円以下)
  • 平成21年分から令和5年分までの贈与税の申告で、以前の非課税制度の適用を受けたことがないこと
  • 配偶者や親族など、自分と特別の関係がある人から住宅を取得するものでないこと
  • 贈与を受けた時に日本国内に住所があること(一定の例外があります)

住宅の床面積などの要件

住宅そのものにも要件があります。新築または取得する住宅は、日本国内にあり、床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下で、床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であることが求められます。

中古住宅(既存住宅)を取得する場合は、昭和57年1月1日以後に建築されたもの、または耐震基準に適合することが証明されたものなどの要件が加わります。間取りや延床面積を考える段階で、この面積要件を頭に入れておくと安心です。

贈与を受ける時期と、入居までの期限

この制度で見落としやすいのが「いつまでに何をするか」の期限です。国税庁のタックスアンサー(No.4508)では、おおむね次のように定められています。

  1. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、受け取った住宅取得等資金の全額を充てて、住宅の新築・取得・増改築等をすること
  2. 同じく翌年3月15日までにその家に住むこと、またはその後遅滞なく住むことが確実と見込まれること
  3. 翌年3月15日の時点でまだ住んでいない場合は、翌年12月31日までに住むこと

3について、同ページでは、翌年12月31日までに住んでいないときは原則として特例の適用を受けられず、修正申告が必要になるとされています。

注文住宅は、土地探しから設計、着工、完成まで時間がかかります。仮に2026年中に贈与を受けた場合は、2027年3月15日までに資金を新築等に充て、2027年12月31日までに入居していることが一つの目安になります。工期の延びや引き渡しの時期によっては要件に関わる可能性があるため、贈与を受ける時期は、家づくりの全体スケジュールと照らし合わせて決めることが大切です。家づくりの大まかな流れは「家づくりの流れ」でも整理しています。

なお、自分の家の工程が要件を満たすかどうかは個別の判断になります。迷うときは、贈与を受ける前に税務署や税理士に確認しておくと安心です。

非課税でも申告は必要です

この制度で大切なのは、非課税になる場合でも贈与税の申告が必要という点です。国税庁のパンフレット「『住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税』等のあらまし」では、この制度は申告期間内に贈与税の申告書と一定の添付書類を提出した場合に限り適用を受けられる、とされています。

申告の期間は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。

添付書類には、戸籍の謄本、新築や取得の契約書の写しなどがあります。省エネ等住宅として1,000万円の限度額を使う場合は、住宅性能証明書や建設住宅性能評価書の写しなど、基準に適合することを証明する書類も必要になります。どの証明書をいつ用意できるかは、家づくりの早い段階で確認しておくとスムーズです。

暦年課税や相続時精算課税とはどう関係するのか

贈与税には、「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの課税方法があります。国税庁のパンフレットによると、非課税制度を適用したあとの残額には、次の控除を使うことができます。

  • 暦年課税の場合:基礎控除(110万円)
  • 相続時精算課税の場合:基礎控除(110万円)と特別控除(2,500万円)

暦年課税の基礎控除110万円は、1年間(1月1日から12月31日まで)に受けた贈与の合計額から差し引くものです(国税庁 タックスアンサーNo.4408)。仮に省エネ等住宅で1,000万円の非課税限度額を使い、暦年課税の基礎控除110万円と組み合わせると、その年に受けた贈与がこの資金だけであれば、1,110万円までは計算上贈与税がかからないことになります。

相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与で選べる制度です(国税庁 タックスアンサーNo.4103)。住宅取得等資金の贈与については、贈与者が60歳未満でも選べる特例があります(No.4503)。一方で、一度選ぶとその年以降は暦年課税に戻せないこと、贈与者が亡くなったときに贈与財産の価額を相続財産に加えて相続税を計算することなど、長い目で見て考えるべき点がある制度です。どちらを選ぶかは家族全体の資産や相続の見通しにも関わるため、税理士などに相談しながら決めることが多いです。

家族で話すときに気をつけたいこと

制度の要件とは別に、家族の間で援助の話を進めるときに意識しておきたいことがあります。

  • 口約束だけにせず、記録を残す:いつ、誰から誰へ、いくらを、何の目的で渡したのかがわかるようにしておくと、申告のときにも役立ちます。贈与契約書を作る、振込で受け取るなど、形に残す方法を家族で話し合っておくと安心です。
  • お金を受け取る時期を先に確認する:制度の期限(贈与の年、翌年3月15日、翌年12月31日)と家づくりのスケジュールを並べてから、受け取る時期を決めます。
  • 誰から受け取るかを整理する:父母と祖父母の両方から援助を受ける場合や、夫婦それぞれの親から援助を受ける場合は、受け取る人ごとに要件を確認しておくことになります。
  • 援助の額を資金計画に反映させる:援助が入ることで、頭金や借入額の考え方も変わります。頭金の考え方は「頭金はいくら用意する?」でも触れています。

制度の期限や必要書類を一緒に確認することは、援助してくれる家族の気持ちを生かすための準備でもあります。

よくある質問

Q. 配偶者の親からの援助も、非課税の対象になりますか?

配偶者の父母(または祖父母)は直系尊属に該当しないとされています(養子縁組をしている場合は該当します)。

Q. 非課税なら、申告はしなくてもいいですか?

申告は必要です。この制度は、申告期間内に贈与税の申告書と一定の添付書類を提出した場合に限り適用を受けられるとされています。

Q. 土地の購入資金も対象になりますか?

住宅の新築に先行して、あるいは新築とともに取得する敷地(土地)の購入も含まれるとされています。

まとめ

  • 父母や祖父母から住宅取得等資金の贈与を受け、要件を満たせば、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外の住宅は500万円まで贈与税が非課税になります(国税庁 タックスアンサーNo.4508)。
  • 対象は令和8年(2026年)12月31日までの贈与です(2026年9月時点)。期限の年をまたぐ計画では、延長の有無を国税庁の最新情報で確かめておくと安心です。
  • 受贈者には、18歳以上・合計所得金額2,000万円以下(床面積40平方メートル以上50平方メートル未満は1,000万円以下)・床面積40平方メートル以上240平方メートル以下などの要件があります。
  • 翌年3月15日までに新築等をし、原則として同日までに入居(遅くとも翌年12月31日まで)する必要があります。
  • 非課税でも、翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告と添付書類の提出が必要です。
  • 暦年課税の基礎控除110万円や、相続時精算課税の控除と組み合わせることもできますが、どちらを選ぶかは長い目で考えることが大切です。

自分のケースが要件に当てはまるか、どの課税方法を選ぶかは、個別の状況によって変わります。最終的な判断は税務署や税理士に確認してください。そのうえで、利害関係のない第三者(ファイナンシャルプランナー、自治体や公的機関の住宅相談窓口など)に相談するという選択肢もあります。

参考

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