相見積もりは何社が適切か。3社を超えると起きること

家づくりを考えはじめると、「相見積もりはとったほうがいい」という話を一度は耳にするかもしれません。一生に何度もない大きな買い物だからこそ、できるだけ多くの見積もりを見てから決めたい。そう考えるのはとても自然なことですし、慎重に進めようとしている表れでもあります。

一方で、「では何社くらいに頼めばいいのか」は、意外とはっきり語られていない部分です。3社くらいがいいという声もあれば、5社以上見て決めたという話もあります。多いほど安心できそうな気もしますが、数を増やしたことで、かえって比べにくくなったと感じることもあるようです。

この記事では、建てる側でも売る側でもない第三者の立場から、相見積もりの目的をあらためて整理し、数が増えたときに起きやすいこと、絞り込む前に準備しておきたいこと、そしてお断りの伝え方までをまとめます。「正解は何社」と決めるためではなく、ご自身たちに合った数を考えるための材料にしていただければと思います。

  • 相見積もりの目的は、値下げ交渉よりも、自分たちの希望と予算の妥当性を知ることです。
  • 数が増えるほど比較の軸がそろわなくなり、打ち合わせの負担や判断疲れも重なりやすいため、2〜3社程度に絞る考え方が多く語られています。
  • 依頼の前に「優先順位・予算の上限・延床の目安・入れてほしい項目」をそろえ、3層の総額に置き直して比べます。
目次

相見積もりの目的は「値下げ」より「妥当性を知ること」

相見積もりというと、複数の見積もりを並べて金額を下げてもらうための方法、というイメージを持つ方もいるかもしれません。もちろん金額は大切な判断材料です。ただ、注文住宅の見積もりは、間取りや仕様、どこまでの工事を含めるかによって中身が大きく変わります。金額だけを横に並べて安いほうを選ぶ、という使い方はしにくいのが実際のところです。

私は、相見積もりのいちばんの目的は、自分たちの希望と予算がどのくらい現実的なのかを知ることだと考えています。たとえば、次のようなことです。

  • 希望している広さや設備が、予算の中でどこまで実現できそうか
  • 予算を超えているとしたら、どの部分がふくらんでいるのか
  • 同じような希望に対して、提案される間取りや仕様にどのくらいの幅があるのか

1つの見積もりだけでは見えなかった「幅」や、自分たちの希望のどこに費用がかかっているのかが、複数を見ることで浮かび上がってきます。値下げの道具としてではなく、自分たちの家づくりの物差しをつくる作業だと考えると、必要な数も見えやすくなります。

3社を超えると起きやすいこと

見積もりの数を増やすこと自体が悪いわけではありません。ただ、比較の手間を考えると、数が増えるほど次のようなことが起きやすくなります。

比較の軸がそろわなくなる

見積書を並べてみると、項目の分け方や含まれている範囲がそろっていないことに気づくかもしれません。ある見積もりには照明やカーテンレールが入っていて、別の見積もりには入っていない。地盤改良や外構が「別途」になっているものもある。間取りそのものも、同じ希望を伝えたつもりで、延床面積や部屋の配置が少しずつ違ってきます。

2つや3つであれば、その違いを一つずつ確かめていくこともできます。けれど4つ、5つと増えていくと、どれとどれを同じ土俵で比べればいいのかがわかりにくくなり、「結局どれが高くて、どれが安いのか」が見えなくなってしまいがちです。

打ち合わせの負担が増える

相見積もりは、見積書を受け取れば終わりというものではありません。要望を伝え、プランを見て、修正を相談し、もう一度見積もりを確認する。そのやりとりを、依頼した数だけ重ねることになります。

仕事や日々の家のことと並行しながら、週末ごとに打ち合わせの予定が入ると、それだけで時間も体力も使います。1回ごとの打ち合わせにきちんと向き合える余裕を残しておくことも、納得のいく判断のための大切な条件です。

判断疲れが起きる

選択肢が多いほど、選ぶこと自体に疲れてしまう。家づくりに限らず、そんな感覚に覚えがある方もいるのではないでしょうか。見積もりの数が増えると、比べるポイントも、覚えておくことも増えていき、決めきれない状態が長く続くことがあります。

候補が多いほど、最後のひと押しで迷いやすくなるとも言われています。決めきれないときの考え方は、何社見ても決められないときでも整理しています。

絞る前に、自分たちでそろえておく4つの条件

比較の手間を考えると、2〜3社程度に絞る考え方が多く語られています。ただ、数を絞ること以上に大切なのが、依頼する前に自分たちの条件をそろえておくことです。同じ条件を伝えておけば、手元に届く見積もりどうしも比べやすくなります。紙1枚にまとめておくだけでも十分です。

1. 希望の優先順位

「広いLDK」「家事動線」「収納」「断熱性能」「外観のデザイン」など、希望をいったんすべて書き出してから、順番をつけておきます。すべてを叶えようとすると予算を超えやすくなるため、「これだけは譲れない」「できれば叶えたい」「なくてもいい」の3段階くらいに分けておくと、見積もりを見たときに調整の方向を決めやすくなります。

2. 予算の上限

「ここまでなら」という上限を、家族で共有しておきます。このとき、建物の金額だけでなく、家を建てるためにかかる費用をすべて含めた総額で考えておくと、あとからのずれが小さくなります。借入の見込み額と自己資金の内訳もあわせて確認しておくと、話がぶれにくくなります。

3. 延床面積の目安

「4LDKくらい」という伝え方だけでは、提案される広さに幅が出やすくなります。今の住まいの広さや必要な部屋の数、欲しい収納の量から、おおよその延床面積の目安を持っておくと、見積もりの前提をそろえやすくなります。

4. 入れてほしい項目のリスト

照明、カーテン、エアコン、外構、地盤改良の扱い、太陽光発電の有無など、「見積もりに含めてほしいもの」をリストにしておきます。依頼するときに同じリストを渡しておくと、「これは入っている、これは入っていない」という差が小さくなり、並べたときに比べやすくなります。

比較するときは「本体・付帯・諸費用」の3層で総額をそろえる

見積書が手元にそろったら、次は並べ方です。坪単価や本体価格だけで比べると、含まれている範囲の違いが見えにくくなります。そこで、総額を3つの層に分けて、それぞれの中身を確かめていく方法をおすすめします。

層主な中身の例確認したいこと
本体工事費基礎・構造・屋根・内装・標準の住宅設備など、建物そのものの工事標準に含まれる設備やグレードはどこまでか
付帯工事費地盤改良、給排水の引き込み、外構、照明・カーテン、空調など「別途」「一式」「未定」になっている項目はないか
諸費用登記、住宅ローンの手数料や保証料、火災保険、印紙代、引っ越しなど見積書の外で、自分たちで用意する費用はどれか

見積書を読み比べていると、同じ項目が本体のほうに入っていたり、付帯のほうに入っていたりすることもあります。そのため、層ごとの金額を1対1で比べるよりも、「3層を足した総額に、何が含まれていて、何が含まれていないか」をそろえることのほうが大切です。

含まれていない項目があれば、その概算を尋ねて書き足し、同じ条件の総額に置き直してみてください。そうすると、差がどこにあるのかが見えやすくなります。3層それぞれの考え方は、注文住宅の総額の記事で詳しくまとめています。

お断りは、丁寧に短く伝える

絞り込む過程では、お断りの連絡が必要になります。お施主様にとっては気が重い場面かもしれませんが、打ち合わせに時間を割いてきたぶん、決めたら早めに、はっきり伝えることが誠実な区切り方になります。伝えるときのポイントは3つです。

  • 最初にお礼を伝える
  • 理由は一言で、簡潔にする
  • 「また機会があれば」など、含みを持たせる言い方は避ける

メールで伝える場合の例文

件名:ご提案へのお礼とお断りのご連絡

〇〇様

いつもお世話になっております。△△です。
これまでプランやお見積もりをご提案いただき、ありがとうございました。

家族で検討を重ねた結果、今回は別のところで進めることにいたしました。
予算と間取りの優先順位を考えたうえでの判断です。

何度もお時間をいただいたにもかかわらず、このようなご連絡となり申し訳ありません。
これまでのご対応に、心より感謝申し上げます。

電話や対面で伝える場合の例文

これまで丁寧にご提案いただいて、本当にありがとうございました。家族で話し合って、今回は別のところでお願いすることに決めました。予算と間取りの兼ね合いで決めたことなので、ご理解いただけたらうれしいです。

お断りのあと、改めて連絡を受けたときの一言

お気持ちはありがたいのですが、家族で決めたことなので、今回はこのままお断りさせてください。

理由を細かく重ねるほど、かえって話が長引きやすくなります。条件の話には戻らず、「家族で決めたこと」をそのまま繰り返すくらいで十分です。

よくある質問

Q. 相見積もりは何社に頼めばいいですか?

比較の手間を考えると、2〜3社程度に絞る考え方が多く語られています。ただ、数そのものより、同じ条件で比べられているかどうかのほうが大切です。

Q. 見積もりを比べやすくするには、何を準備すればいいですか?

希望の優先順位、予算の上限、延床面積の目安、見積もりに含めてほしい項目のリストの4つをそろえ、どの依頼先にも同じ条件を伝えておくと比べやすくなります。

Q. 相見積もりのお断りは、どう伝えればいいですか?

最初にお礼を伝え、理由は一言で簡潔にし、「また機会があれば」など含みを持たせる言い方は避けます。決めたら早めに、はっきり伝えることが誠実な区切り方になります。

まとめ

  • 相見積もりの目的は、値下げ交渉よりも、自分たちの希望と予算の妥当性を知ること
  • 数が増えるほど、比較の軸がそろわなくなり、打ち合わせの負担や判断疲れも重なりやすい
  • 比較の手間を考えると、2〜3社程度に絞る考え方が多く語られている
  • 依頼の前に「優先順位・予算の上限・延床の目安・入れてほしい項目」をそろえておく
  • 見積もりは「本体・付帯・諸費用」の3層で、同じ条件の総額に置き直して比べる
  • お断りは、お礼を先に、理由は一言で、短く伝える

何社に頼むかは、ご家族の状況や、かけられる時間によっても変わります。数そのものより、同じ条件で比べられているかどうかを大切にしてみてください。自分たちだけで整理しきれないときは、利害関係のない第三者に相談する選択肢もあります。

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