打ち合わせのたびに、決めることが増えていく気がする。何回目かも分からなくなってきた。前回と同じ話をもう一度している気もする。そんな感覚を持ったまま、次の予定だけが決まっていく。これは、家づくりの途中でとてもよくある状態だと思います。
先に言っておきたいのですが、「長い」「進まない」と感じることそのものは、何かがおかしいサインではありません。注文住宅の打ち合わせは、間取りだけでなく、収納の中の棚板の位置から、コンセントの高さ、外壁の色まで、生活の細部を先に言葉にしていく作業です。決めることの数がそもそも多いので、時間がかかるのは自然なことです。
私は住宅の記事制作に携わるライターです。契約する側でも、売る側でもない第三者としてその場にいた立場から言うと、「進んでいない」と感じている方の多くは、実際には進んでいないのではなく、自分が今どの段階にいるのかが見えていないだけ、という場合が多いように感じます。今回は、その「見えていない」を少しほどくために、一般的な流れと、止まりやすい場所を整理してみます。
打ち合わせの一般的な流れを、お施主様の側から見る
呼び方や順番には細かい違いがありますが、注文住宅の打ち合わせは、おおむね次のような段階を踏んで進んでいきます。ここでは特定の会社のやり方ではなく、業界で広く見られる一般的な流れとして書きます。
- ヒアリング:家族構成、暮らし方、希望する部屋数や広さ、予算感などを伝える段階です。
- プラン提案:ヒアリングをもとに、間取りの案が示される段階です。ここで複数回のやり取りが発生することも珍しくありません。
- 見積り:プランに沿って、おおよその金額が提示される段階です。
- 契約:プランと金額にめどが立った時点で、契約を結びます。
- 詳細打ち合わせ:契約後、仕様や設備、内装、外装など、細部を一つひとつ決めていく段階です。
- 着工:詳細が固まり、実際に工事が始まります。
こうして並べると、契約はゴールではなく、むしろ「これから細かいことを決めていく」という作業の入り口に近いことが分かります。実際、契約前よりも契約後のほうが、打ち合わせの回数も密度も増えることが多いです。
打ち合わせの回数について、根拠のはっきりしない「平均◯回」という数字がよく語られますが、これは建物の規模やお施主様の決め方によって差が大きく、確かな出典を示せる公的な統計は見当たりませんでした。回数そのものより、自分が今どの段階にいるかを把握しておくほうが、進み方の感覚をつかむ助けになると思います。
止まりやすいのは「詳細」の段階
一般に、時間がかかりやすいのは、契約後の詳細打ち合わせの段階です。理由はいくつか考えられます。
まず、決める項目の数そのものが一気に増えます。プランの段階では「リビングを何畳にするか」といった大きな単位の話が中心ですが、詳細の段階になると、キッチンの面材の色、扉の取っ手の形、洗面台の高さ、コンセントの位置と数といった具合に、判断の粒度が細かくなります。一つひとつは小さな決めごとでも、積み重なると相応の時間がかかります。
次に、詳細の段階になって初めて、自分の中の希望がはっきりしてくることも多いです。プランの段階では漠然と「明るい家がいい」と思っていたものが、実際にサンプルや実物を見ることで、「思っていたのと違う」「もう少しこうしたい」という具体的な感覚に変わっていきます。これは決して悪いことではなく、むしろ自然な過程だと思うのですが、その分、一度決めたことに戻って考え直す場面も出てきます。
さらに、詳細の段階では、お施主様本人だけでなく、家族の間での意見のすり合わせが必要になる項目も増えます。夫婦や親世帯との間で希望が分かれる部分があると、その調整に時間がかかることもあります。
こうした事情を踏まえると、詳細打ち合わせの段階で時間がかかっているのは、多くの方に共通して起きていることだと感じます。自分だけが遅れているわけではない、というのは、覚えておいて損はないことかもしれません。
自分の側で止めている項目を書き出してみる
打ち合わせが進まないと感じたとき、一度、何が決まっていて、何が決まっていないのかを、自分の手で書き出してみることをおすすめします。
方法は難しいものではありません。ノートでもスマートフォンのメモでも構わないので、「決定済み」「保留中」「まだ手をつけていない」の3つに分けて、今出ている項目を並べてみます。図面や見積書、打ち合わせでもらった資料を横に置きながら書き出すと、抜けが少なくなります。
これをやってみると、「進んでいない」と感じていたものの中に、実は自分の中で判断がついていない項目がいくつか含まれていることに気づくことがあります。たとえば、キッチンのメーカーは決まっているけれど、色は迷ったまま保留になっている、といった具合です。この場合、打ち合わせが止まっているのではなく、自分の判断待ちで止まっている、という状態です。
判断待ちであること自体は問題ではありません。むしろ、自分がどの項目で迷っているのかがはっきりすると、次に何を考えればいいかが見えてきます。予算と相談したいのか、実物を見てから決めたいのか、家族ともう一度話したいのか。迷いの中身が分かれば、次の一歩も具体的になります。
逆に、書き出してみて「決定済み」の項目が思ったより多いと分かることもあります。感覚としては足踏みしているつもりでも、実際には着実に積み上がっているものがある。これは、進み具合を実感しにくい打ち合わせの性質上、意外と見落としがちな点です。
次回の打ち合わせで「今どこにいるか」を聞く
書き出してもなお、全体のどのあたりにいるのか分かりにくいという場合は、次回の打ち合わせで、率直に聞いてみるのも一つの方法です。
たとえば、次のような聞き方が考えられます。
- 「今、全体の中でどのあたりの段階にいますか」
- 「今日決まったこと、決まっていないことを、もう一度まとめてもらえますか」
- 「このあと着工までに、決めることはあとどのくらい残っていますか」
こうした質問は、進み具合を客観的な形で示してもらうためのものです。打ち合わせの場は情報量が多く、その場では理解したつもりでも、後から振り返ると曖昧になっていることが少なくありません。全体像を定期的に確認する一言を挟むことは、決して失礼なことでも、急かすことでもないと思います。むしろ、家づくりを一緒に進めていく上で、自然なコミュニケーションの一部だと感じます。
もし、聞いても答えが曖昧だったり、資料としてまとまったものが出てこなかったりする場合は、自分でメモを取りながら、決定事項を都度確認していくことをおすすめします。口頭でのやり取りだけに頼らず、記録を残しておくと、後々の認識のずれを防ぎやすくなります。
まとめ
打ち合わせが長いと感じるのは、決めることの多さを考えれば自然なことです。特に契約後の詳細打ち合わせは時間がかかりやすい段階だと言えます。今どこにいるか分からないときは、決定事項を自分で書き出し、次回に「今どの段階か」を聞いてみることが、見えないものを見えるようにする一歩になります。
それでもなお、一人で全体を把握するのが難しいと感じることもあると思います。そういうときは、家を建てた人でも、売る人でもない第三者に、今の状況を整理してもらうという選択肢もあります。渦中にいると気づきにくいことも、外から見ると意外とはっきり見えることがあるからです。

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