家を建てようと決めると、間取りの本を眺めたり、住宅展示場を見に行ったりと、新しい家のことで頭がいっぱいになる時期があります。「広いリビングがいい」「収納はたくさん欲しい」と、希望がふくらんでいくのは自然なことです。
ただ、その希望をいざ図面に落とし込もうとすると、「広いって、何畳くらい?」「たくさんって、どのくらい?」と聞かれて、答えに詰まる方も少なくありません。これは準備が足りないのではなく、いまの暮らしを数字で見る機会がこれまでなかっただけ、ということがほとんどです。
実は、新しい家の希望の多くは「いまの家の不満」と「いまの家の満足」から生まれています。そして、いまの家はいつでも測れる、いちばん身近な資料です。この記事では、間取りを考える前に、いまの住まいで測っておきたいことと、その記録のしかたをまとめました。マンション、アパート、戸建て、社宅など、住まいの種類を問わず使える内容にしています。
- 新しい家の希望はいまの暮らしの不満と満足から生まれることが多く、いまの住まいは自分たちに合った目安を教えてくれる身近な資料です。
- 持っていく家具・家電は本体の寸法に加えて「使うときに必要な空間」を、収納は寸法と中身の量をセットで記録します。
- 動線や音、明るさ、暑さ寒さは「場所」と「時間帯」のメモでよく、写真+メジャーで残すと打ち合わせで伝えやすくなります。
なぜ「いまの家」を測るところから始めるのか
新しい家の図面は、線と数字でできています。一方、住む人の頭の中にある希望は「もう少し広く」「使いやすく」といった感覚の言葉であることが多いものです。この二つの間をつなぐのが、いまの家の寸法です。
たとえば「キッチンが狭い」という不満があったとして、何が狭いのかは人によって違います。調理台の奥行きが足りないのか、横幅が足りないのか、背中側の通路が狭くて家族とぶつかるのか。いまのキッチンを測ってみると、「作業台の横幅がこのくらいしかないから、まな板と鍋を並べられない」というように、不満の正体が数字で見えてきます。
満足していることも同じです。「このソファの位置からテレビを見るのがちょうどいい」「この洗面台の高さは使いやすい」と感じているなら、その寸法は新しい家でも再現したい基準になります。不満だけを持って図面に向かうと、いまうまくいっている部分まで変わってしまうことがあるため、満足の記録も同じくらい大切です。
また、いまの家の寸法は「自分たちにとっての目安」になります。一般的な目安は本やインターネットにも載っていますが、持っている物の量や体格、暮らし方は家庭ごとに違います。いまの住まいで実際に使っている寸法こそが、ほかのどの数字よりも自分たちに合った出発点になりやすい、という考え方もあります。
測っておきたいもの① 家具・家電と収納の量
まず取りかかりやすいのが、新しい家にも持っていく予定の家具・家電の寸法です。置き場所が決まってから「入らない」と気づくことを避けるためにも、早めに測っておくと安心です。
測っておきたい主なものを表にまとめました。
| 対象 | 測っておきたい寸法 | あわせてメモしたいこと |
|---|---|---|
| 冷蔵庫 | 幅・奥行き・高さ | 扉の開く向き、扉を開けたときに必要な前のスペース、放熱のためのすき間 |
| 洗濯機 | 幅・奥行き・高さ、防水パンの大きさ | ふたの開き方、排水口の位置、上に棚を付けたいか |
| ソファ | 幅・奥行き・高さ、背もたれを倒したときの奥行き | 座る人数、テレビとの距離 |
| ベッド | 幅・長さ・高さ(ヘッドボード含む) | 両側から降りたいか、下を収納に使っているか |
| ダイニングテーブル | 天板の幅・奥行き・高さ | 椅子を引いたときに必要な幅、座る人数 |
家具・家電は本体の大きさだけでなく、「使うときに必要な空間」までメモしておくのがポイントです。冷蔵庫の扉を開けたとき、ソファの前を人が通るとき、ダイニングの椅子を引いたときに、どのくらいの余白があれば窮屈に感じないかは、いまの家で実際に動いてみると確かめやすいものです。
買い替えを考えているものがあれば、その候補の寸法も書き添えておきます。いまより大きな冷蔵庫にしたい、ベッドを二つに分けたいといった予定は、間取りに直接かかわってくるためです。
収納は「広さ」と「中身」をセットで
収納については、いまの収納一つひとつの幅・奥行き・高さを測っておくと、新しい家でどのくらいの収納が必要かを考える材料になります。押し入れ、クローゼット、キッチンの吊り戸棚、洗面台の下、靴箱など、場所ごとに書き出してみてください。
「収納の奥行きはどのくらいが目安か」は、よく調べられる疑問の一つです。ただ、使いやすい奥行きは、しまう物によって変わります。布団や衣装ケースを入れるなら深い収納が向いていることが多く、食品のストックや本、日用品なら、奥行きが深すぎると奥の物が取り出しにくくなることもあります。いまの収納で「奥が使えていない」「手前にしか物を置いていない」と感じる場所があれば、その奥行きと、実際に使えている奥行きの両方をメモしておくと、新しい家での目安を考えるときに役立ちます。
あわせて、中身の量も記録しておきたいところです。衣類ならハンガーにかけている服の横幅の合計、たたんでいる服の衣装ケースの数、本なら本棚の段数、靴なら家族それぞれの足数、というように、数えられる単位で書き出します。
測っておきたいもの② よく使う場所の寸法
家具や収納のほかに、毎日よく使う場所の寸法も測っておくと、新しい家の使い勝手を考えるときの手がかりになります。
キッチンでは、調理台の高さ、作業スペースの横幅と奥行き、シンクやコンロとの位置関係、背中側の通路の幅を測っておきたいところです。「料理中に作業スペースが足りない」「冷蔵庫と調理台が離れていて何度も往復する」といった日々の小さな不満は、寸法と一緒に書いておくと伝わりやすくなります。
洗面台では、洗面ボウルの高さ、鏡の大きさ、洗面台まわりの収納の量をメモしておきます。朝の時間に家族が並んで使うことがあるなら、何人が同時に立てているか、ぶつからずに使えているかも書き添えておくとよいでしょう。
玄関では、家族全員の靴の数(季節の靴、長靴、子どもの成長で増える分も含めて)、ベビーカーや傘、アウトドア用品など玄関に置いている物の量、靴を脱ぎ履きするときの広さを確認します。
数字にしにくいもの──動線、音、明るさ、暑さ寒さ
寸法のようにメジャーで測れないものの中にも、新しい家を考えるうえで大切なことがあります。これらは数字にこだわらず、気づいたことをメモするだけで十分です。
朝の身支度と、家族のすれ違い
動線は、実際に一日の流れをたどってみると見えてきます。とくに家族の動きが重なりやすいのは、朝の身支度の時間帯です。起きてから家を出るまでに、寝室、洗面所、トイレ、キッチン、クローゼット、玄関をどの順番で回っているか、何回行き来しているか、どこで家族とすれ違ったり順番待ちをしたりしているかを書き出してみてください。
歩数を数えてみるのも一つの方法です。正確である必要はなく、「洗面所とクローゼットの往復が多い」「キッチンの入口で毎朝ぶつかる」といった気づきが得られれば、新しい間取りでどこを近づけたいか、どこを広くしたいかを考える材料になります。
音・明るさ・暑さ寒さは「場所」と「時間帯」で
音、明るさ、暑さ寒さについては、「どこで」「いつ」気になるかをセットでメモしておくのがおすすめです。
- 音:外の車の音が気になる部屋と時間帯、家族の生活音(テレビ、足音、水まわりの音)が気になる場所
- 明るさ:昼間でも照明をつけている部屋、朝日や西日がまぶしい時間帯、逆に日当たりが気に入っている場所
- 暑さ寒さ:夏に暑くなりやすい部屋、冬に寒さを感じる場所(脱衣所、廊下、窓際など)、結露が出やすい窓
同じ家でも季節によって感じ方が変わるため、できれば数か月かけて少しずつ書き足していくと、より実感に近い記録になります。
記録のしかたと、打ち合わせで数字を伝える利点
測った内容は、あとから見返せる形で残しておくことが大切です。おすすめは「写真+メジャー」の組み合わせです。測りたい場所にメジャーを当てた状態で写真を撮っておくと、どこからどこまでを測ったのかが一目でわかり、数字だけのメモよりも伝わりやすくなります。スマートフォンのアルバムに「いまの家」などのフォルダを作ってまとめておくと、打ち合わせの場でもすぐに見せられます。寸法は「場所・測った物・幅・奥行き・高さ・気になること」の項目で、家族で共有できるメモやノートに書き足していくと整理しやすくなります。
家族それぞれの不満と満足を書き出す
もう一つ試してほしいのが、家族それぞれに、いまの家の不満と満足を別々に書き出してもらうことです。同じ家に住んでいても、料理をする人、洗濯をする人、在宅で仕事をする人、子どもでは、気になる場所がまったく違うことがよくあります。
一緒に話し合うと、声の大きい人の意見に寄りやすくなることもあるため、まずは一人ずつ書いてから見せ合うと、それぞれの本音が出やすくなります。意見が食い違ったときの向き合い方については、夫婦の意見が合わないときの考え方もあわせて参考にしてみてください。
数字で伝えると、話が具体的になりやすい
打ち合わせで「収納を多めに」と伝えるのと、「いまの押し入れ二つ分と同じくらいの量が入る収納が欲しい。ハンガーにかける服はこのくらいの横幅がある」と伝えるのとでは、そのあとの話の進み方が変わってくることが多いです。数字や写真があると、お施主様自身も図面を見たときに「この収納は、いまの押し入れより大きいのか小さいのか」を比べやすくなります。
また、図面の段階で家具の配置を書き込んでみるときにも、手元の寸法がそのまま使えます。持っていく予定のソファやダイニングテーブルが、新しいリビングにどう収まるのか、まわりにどのくらいの余白が残るのかを確かめやすくなり、住み始めてからの「思っていたのと違う」を減らす助けになります。
よくある質問
Q. 家を建てる前に、いまの家で何を測ればいいですか?
持っていく家具・家電の寸法、収納一つひとつの幅・奥行き・高さと中身の量、キッチン・洗面台・玄関などよく使う場所の寸法です。
Q. 収納の奥行きは、どのくらいが目安ですか?
使いやすい奥行きはしまう物によって変わります。いまの収納で奥が使えていない場所があれば、その奥行きと実際に使えている奥行きの両方をメモしておくと、新しい家での目安を考えるときに役立ちます。
Q. 測った内容は、どう記録すればいいですか?
測りたい場所にメジャーを当てた状態で写真を撮る「写真+メジャー」の組み合わせがおすすめです。家族それぞれの不満と満足も、別々に書き出してから見せ合います。
まとめ
家を建てる前にやっておきたいことの一つが、いまの家を測って記録することです。新しい家の希望は、いまの暮らしの不満と満足から生まれていることが多く、いまの住まいは、自分たちに合った目安を教えてくれる身近な資料になります。
- 持っていく家具・家電は、本体の寸法に加えて「使うときに必要な空間」もメモする
- 収納は、幅・奥行き・高さと、中身の量をセットで記録する。奥行きは「実際に使えている深さ」も見ておく
- キッチン、洗面台、玄関など、よく使う場所の寸法と使い方を書き出す
- 動線や音、明るさ、暑さ寒さは、数字でなく「場所」と「時間帯」のメモでよい
- 写真+メジャーで残し、家族それぞれの不満と満足を別々に書き出す
測った数字は、打ち合わせで希望を具体的に伝えるための材料になり、図面を見るときの物差しにもなります。何から考えればよいか迷ったときは、利害関係のない第三者(ファイナンシャルプランナー、自治体や公的機関の住宅相談窓口など)に相談するという選択肢もあります。
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