お施主様が「わからない」と言えるかどうかで、家は変わる

説明を聞きながら、なんとなく頷いている。話の流れは分かる気がするけれど、正直なところ、半分くらいは「たぶんそういうことかな」で受け取っている。……家づくりの打ち合わせでは、とてもよくある状態だと思います。

先に言っておきたいのですが、分からないまま頷いてしまうことは、あなたの理解力が足りないからではありません。家づくりには、ふだんの暮らしではまず出会わない言葉や仕組みが、一度にたくさん出てきます。初めて聞くことを、初めて聞いたその場で飲み込むのは、誰にとっても難しいことです。

私は住宅の記事制作に携わるライターです。建てた人でも、売る人でもない立場から、この記事では、その「頷き」の少し先にあるものについて、静かに考えてみたいと思います。

  • 打ち合わせで分からないまま頷いてしまうのは、とても自然なことで、あなたのせいではありません。
  • 家づくりは決めたことが積み重なっていくため、小さな受け取り違いが、後になって「こんなはずじゃ」につながることがあります。
  • 「別の言い方で」「実物か写真で」など言い方を少し変えるだけで、分からないことは伝えやすくなります。
目次

分からないまま頷いてしまうのは、自然なこと

打ち合わせの場で「分かりません」と言うのは、思っている以上に勇気がいります。

話を止めてしまうのが申し訳ない。こんなことも知らないのかと思われたくない。あとで調べれば分かるかもしれない。決めることが多くて、ひとつひとつ立ち止まっていたら終わらない気がする。どれも、ごく自然な気持ちです。

それに、お施主様の多くは、家づくりを「ちゃんとやりたい」と思っています。だからこそ、分からないことがあると、それを自分の準備不足のように感じてしまうのかもしれません。真面目な方ほど、頷いて先に進もうとしてしまうのではないでしょうか。

分からないまま頷くのは、やる気がないからでも、いいかげんだからでもありません。むしろ、家づくりに真剣に向き合っているからこそ起きることなのだと、私は感じています。

分からないまま進むと、何が起きるのか

ただ、ひとつだけ知っておいてほしいことがあります。

家づくりは、決めたことが積み重なって形になっていきます。ひとつの選択が、次の選択の前提になる。間取りが決まれば窓の位置が決まり、窓の位置が決まれば家具の置き場所が決まる、というように、決めたことは静かにつながっていきます。

そのため、ある時点で「たぶんこういうことだろう」と受け取ったことが、自分の思っていた意味と少しずれていた場合、そのずれは後になるほど見えにくくなり、そして直しにくくなります。図面の上では気づかなかったことが、実際に形になってはじめて「あれ、こういうことだったのか」と分かる。家づくりで耳にする「こんなはずじゃなかった」の多くは、こうした小さな受け取り違いの積み重ねから生まれるのだと思います。

ここで大切なのは、そのとき誰かが間違えたわけではない、ということです。説明はされていたし、お施主様も頷いていた。それでも、言葉と頭の中のイメージが重なっていなかった。ずれは、とても静かに生まれます。

だからこそ、分からないと感じたその瞬間が、いちばん軽やかに確かめられるタイミングなのです。

「わからない」を伝える、聞き方の例

とはいえ、「分かりません」とだけ口にするのは、やはり少し気が引けるものです。そんなときは、少し形を変えて聞いてみるのもひとつの方法です。いくつか、そのまま使える言い方を挙げてみます。

「もう一度、別の言い方で説明してもらえますか」
同じ説明をもう一度聞くより、角度を変えてもらうほうが、すっと入ってくることがあります。「分からない」ではなく「別の言い方で」とお願いするだけなので、口にしやすい言葉だと思います。

「実物か写真で見られますか」
素材や広さ、色や質感は、言葉だけで想像するのがとても難しいものです。目で見られるものがあると、頭の中のイメージと現実との距離がぐっと縮まります。

「これを決めないと、何が困りますか」
決めることが多くて頭がいっぱいになったときに役立つ聞き方です。今すぐ決める必要があるのか、なぜこの順番なのかが分かると、選ぶことへの負担が少し軽くなります。

「私の理解で合っているか、言い直してみてもいいですか」
自分の言葉で言い直してみると、どこが分かっていて、どこがあいまいなのかが自分でも見えてきます。ずれがあれば、その場でそっと直すことができます。

「一度持ち帰って考えてもいいですか」
その場で分からないことは、その場で決めなくてもいい場合があります。考える時間をもらうことも、立派な「わからない」の伝え方です。

どれも、特別な知識がなくても使える言葉です。メモに書いて打ち合わせに持っていくだけでも、少し気持ちが楽になるかもしれません。

「わからない」は、家づくりを前に進める言葉

「分からない」と言うことは、話を止めることのように感じるかもしれません。でも実際には、その一言があるからこそ、話はきちんと前に進んでいくのだと思います。

分からないことを分からないと伝えると、そこから説明が補われ、イメージがそろい、次の選択に安心して向き合えるようになります。立ち止まったように見えて、じつは足元を確かめながら歩いている。家づくりにおける「わからない」は、そんな一歩なのだと私は思います。

そしてもうひとつ。「わからない」と言えることは、その家を自分ごととして考えている証でもあります。分かったふりをせずに向き合おうとする姿勢は、きっと住みはじめてからの納得感にもつながっていくはずです。

よくある質問

Q. 打ち合わせで分からないことがあったら、いつ聞けばいいですか?

分からないと感じたその瞬間が、いちばん軽やかに確かめられるタイミングです。受け取り違いは、後になるほど見えにくく、直しにくくなります。

Q. 「分かりません」と言いにくいときは、どう聞けばいいですか?

「もう一度、別の言い方で説明してもらえますか」「実物か写真で見られますか」「これを決めないと、何が困りますか」など、形を変えて聞く方法があります。

Q. その場で決められないときは、どうすればいいですか?

「一度持ち帰って考えてもいいですか」と伝える方法があります。考える時間をもらうことも、立派な「わからない」の伝え方です。

まとめ

  • 打ち合わせで分からないまま頷いてしまうのは、とても自然なことで、あなたのせいではありません。
  • 家づくりは決めたことが積み重なっていくため、小さな受け取り違いが、後になって「こんなはずじゃ」につながることがあります。
  • 「別の言い方で」「実物か写真で」「これを決めないと何が困るか」など、言い方を少し変えるだけで、分からないことは伝えやすくなります。
  • 「わからない」は、家づくりを止める言葉ではなく、前に進めるための言葉です。

分からないと感じたら、どうかそのまま、その気持ちを言葉にしてみてください。その一言が、あなたの家をあなたらしいものにしていくのだと思います。

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